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Column

2020.5.8

香りの読書

4月からスタートしたこの【コラム】はフレグランスビジネスに関わる、私達Forteのメンバーが交代に、自由なスタイルで“香り”を文章にする、いわば“香りのエッセイ”です。
Vol.2となる今回は、メンバーMP子が担当します。

さて、外出できない今年のGWにMP子がやりたかったことの一つ、読書。先日たまたまネットで見つけた、タイトルに「香り」という文字が入っている新刊をアマゾンで購入し、これを私のGWのお供にしました。
その本の内容は、超人的な嗅覚を持つ香りのオーダーメイドサロンを経営する調香師の男性と、そこに家政婦としてアルバイトにやってきた心に仄暗い過去を抱える主人公の女性のストーリー。

彼のところには亡き夫の香りを求める女性、匂いを手掛かりに行方不明の娘を探す案件など、謎めいた依頼人達が次々と訪れる。そして人間が放つ、嘘やネガティブな香りまでもこの調香師は嗅ぎ分けることができるという、いくら調香師とはいえ、絶対音感ならぬ警察犬をも超える絶対嗅覚?の持ち主。

「香りは永遠に記憶される」とブック帯にもあるように、主人公は目に見えない香りが持つ強烈なパワーによって記憶やその情景が鮮烈に焼き付いていて、この調香師と出会いによって自らの過去と向き合うことになる。

嗅覚は人間の五感の中でもプリミティヴで動物的。香水として仕上がった美しい香りだけではない、生々しい匂いの描写がある一方で、小説の舞台である、洋館に咲く季節の花々やハーブ、そしてそれらを使って丁寧に作られる料理がストーリーの中で色鮮やかに匂い立つように魅力的に描かれている。

この本を読み終えた後には、普段は歩かない遊歩道から遠回りして季節の花を眺めながらスーパーに出かけ、ハーブを使った料理が作りたくなり、ブイヤベースとバニラビーンズの効いた焼きプリンを作ってみたりして、それなりによいGWを過ごすことができた。

今月末までに延長された、自粛期間。そのあとにくる初夏のきらきらとした季節を今から心待ちにして、この夏はどんなノートのフレグランスを纏おうかな?と思いを巡らせる。

6月に発売される、ミネラルっぽさのあるオリエンタルノートのエキゾチックなフレグランス・・・または普段はあまり使わない王道のシトラス系でイタリアンベルガモットのジェンダレスなフレグランス?あるいは店頭で人気のある軽やかなホワイトフローラルもたまにはいいかもしれない。

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